5月に入って、百貨店や専門店などの店頭で浴衣を見かけるようになりました。趣向を凝らした色とりどりのデザインの浴衣が、店内を華やかに彩っています。特設コーナーを設ける店もたくさんあります。
見ていて楽しいゆかた売り場ですが、「5月から浴衣を売り出すのは早すぎるのではないか」と思うことがあります。浴衣を着る時期は7月・8月とされているからです。
でもその一方で「今季はどれだけの人が浴衣デビューするのかな」「浴衣が着物に親しむきっかけになるといいな」と思います。
さて私は、浴衣を着るときにこだわっていることがあります。それは「作り帯を使わない」ということです。
作り帯はあらかじめ結び目ができていて、普通の帯よりも簡単に着けられる帯のことです。少し前までは、ゆかた売り場で見かける作り帯といえば定番の文庫や蝶結びが多かったのですが、最近は文庫をより華やかにアレンジした結び方や、貝の口などの作り帯も見かけるようになりました。
でも、私はそうした作り帯がどうしても好きになれません。作り帯は短い時間で着けられるので確かに便利といえますが、どうしても安っぽい感じに見えてしまうのです。そのうえ見る人が見れば、作り帯を着けているのはすぐにわかります。特にポリエステルの作り帯は、「いかにも作り帯です」といった感じです。
そんなわけで私は、浴衣に合わせる帯は必ず自分で結びます。私は以前着付けを習っていたことがあり、文庫や貝の口といった、半幅帯の基本的な結び方を教わりました。着付け自体は習ってもものにならず、今でも着物をきれいに着られる自信はありませんが、それでも半幅帯の結び方を習ったことは、今でもすごく役に立っています。半幅帯の結び方は、名古屋帯のお太鼓に比べると易しいといえます。手順が少なく、使う小物も少ないので、コツをつかみやすいのです。
真夏の町中で、自分で帯を結んで浴衣を着ている人を見ると好ましく思います。たとえ結び方が少々不恰好でも、作り帯にありがちな安っぽさは感じられないので、「よく頑張ったね」と励ましたい気持ちになれるのです。
さて今年の夏は、もし浴衣を着る機会があれば、紗や麻といった夏物の半幅帯を試してみたいです。リサイクルショップでたまたまそうした帯を見かけて、是非とも試してみたいと思いました。今まで私は、ポリエステルの半幅帯か、正絹で通年使える半幅帯しか使ったことがなく、夏物の半幅帯を着けたことがなかったのです。紗や麻の帯を浴衣に合わせると、見た目が涼しそうで上品な感じになり、以前とは違った着こ なしができるのではないかと期待しています。